総理府から交通安全に関する世論調査結果が発表された。
時あたかも、4/1〜はチャイルドシートの義務付けが、4/6〜15は「春の全国交通安全週間」が始まる。
この種の調査は、定量的データの裏付けがあった上で対象者の意識や認識を把握して、次の施策
をどうするかの検討材料として行うものと考えられるので、その観点から特異な意見、興味ある
現象に対してグラフと因子分析によって、隠れた要望・潜在意識を解釈した。
H6、H9、H11と調査されているが、調査内容がその都度変化していて完全比較
が不可能な項目もあることを踏まえ分析した。即ち、H6、H9の比較(項目によっては
H11も含めた)とH11の年齢別分析とを絡めて因子分析等の解釈手法を活用した。
H12年「春の全国交通安全運動」の重点
1.子供と高齢者の交通事故防止
2.二輪車・自転車の交通事故防止
3.チャイルドシートとシートベルトの着用の徹底
の中から ・高齢者の交通安全 ・チャイルドシートベルト着用 ・若者の事故防止について
解析した。
1.高齢者の交通事故防止
高齢者の事故防止について、年度推移と
H11 の年齢別意見をみた。尚質問項目が高齢者の一般と高齢
運転者、の両方に関するものが混在しているので、グラフ表示による解析とした。
*H9 に比べH11に実技指導(28.6%が33.7%に)と免許制限(30.1%が36.5%に)が増えているのが特徴と
言える
*免許取得制限、実技指導、体験講習、の項目は年度推移(上の表)の通り年々増えているが、当事者
である高年齢者の意見は他の年代に比べて極めて低い。
*免許取得制限、実技指導に対する60歳以上の意見が極端に少ない。後でみるが、若者の運転事故
防止策では年齢による大きな違いは無く(特に制裁処置に関しての)、このことは高齢者のエゴが強く出
ているように感じられる。
2.チャイルドシート着用
チャイルドシート着用について、年度推移と H11 は未着用理由を年齢別に分析した。そして因子分析に
よって、該当の子供を抱える 20代、30代の親の意見を抽出してみた。
*同乗者が守る、大人用を使用、いやがる等が高くH9 時点では改善されたとは言えない。
*しかし、いやがる、体が大きくなった、がH9高くなったのは関心が出てきたからか、とも言える。
*「近距離だから着用しない」が比較的高く、これはここでは取り上げていないが一般道路でのシートベル
トを着用しない理由の第1位が同じ理由であり、一旦公道に出た場合は自分の都合(近距離、遠距離)
は通用しないことの啓蒙が必要ではないだろうか。
*各年代共傾向は同じなので該当の代表年齢層をグラフ化したが、平均値とチャイルドシート着用該当の
子供を持つ人の意見に違いがあり、アンケートの留意点を感じさせる。即ち当事者以外の人は、啓蒙や
意識の高揚等の一般論を強調する傾向にあるのではないか。
因子分析 チャイルドシート着用促進策(年齢別)のデータを因子分析した。
§因子負荷量解釈
因子1:商品の仕様や価格への期待 (商品への期待)
因子2:啓蒙や教育による意識喚起 (啓蒙・意識喚起)
*因子分析によって、当事者である20・30代は商品の価格・仕様への期待が大きく、そして意識的に
は必要性を認識していることが分かる。興味あるのは、70代が同様な意見を持っていることである。
§H11にはチャイルドシートの着用しない理由を調査していないので解釈は難しいが、H11の年齢
別調査の分析を見ると
1.H6,H9の調査で高い率を占めた (1)同乗者が守る
(2)大人用を使用
(3)体が大きくなりシートに合わない
等は、「価格が高い」を言い換えたものであり、同時に商品に対する希望が現れていると見る
べきではないだろうか。
3.若者の事故防止
若者の事故防止について、年度推移と H11は年齢別に分析した。そして因子分析によって、この根の
深い問題への解決策を探った。
取・指強化:違法・無謀運転に対する取り締まりや指導の強化
制裁強化:違法運転に対する制裁措置を強化
*調査の年度毎に取り締まりや制裁の強化が増えている。又H11の年齢別分析では、年齢差による違
いは大きくない。
*先に、1.高齢者の事故防止の中でみたように、20代、30代共に他の年代に比べ特異な意見を出して
いない。(高年齢者の特異意見が見えた)
因子分析 若者の事故防止策(年齢別)のデータを因子分析した。
§因子負荷量解釈
因子1:法的制裁強化や家庭・学校含めた指導 (自覚・責任)
因子2:違法者への講習や免許取得後の教育で再指導 (講習・教育)
*因子負荷量と先のグラフとから、無謀運転結果に対しての制裁の強化ではなく、違法運転に対する取締
りや指導の強化を年代を問わず考えていることが伺える。
これは制裁の前段階に更正の機会を期待しているのであろうか。
※考察
1.社会的問題として取り組まれている交通安全であるが、古くて新しい問題であることを改めて感じさせ
られた。
2.総論賛成、各論反対や当事者とその他の人の意見の違いがここにも現われていて、真意はどこにあ
るか、どこに焦点を当てて施策を打つべきか、をいかに見定めるかが改めて浮き彫りとなった。
3.法的規制策は、制裁そのものよりも「責任」の自覚と「周知・徹底」の効果の大きさを潜在的に意識し
た意見ではないだろうか。
4.70代の意見が若者に共通している部分をみ、年代を超えた共通意識の意味を感じた。